真田幸村は秀忠率いる大軍を撃退した。だが関ヶ原の合戦は西軍の敗北に終わり、三成は没して、幸村は友情とすべてを失う。数年後、家康は徳川の世を盤石にすべく、大阪城の豊臣家を滅ぼさんと軍を興す。天下の趨勢が定まりつつある中、幸村は己が義と友情を貫く事を決意、圧倒的劣勢の大阪城に入り、あくまで徳川の天下に抗おうとする。
私は友情の為に戦ってきた。
だが、今や三成殿は亡く、兼続殿は敵…。
私はなんの為に戦っているのだろう。
もふ成殿と私:13
大阪城に入場し亡き秀吉公の忘れ形見秀頼様に謁見する。
淀君共に迎え入れられ涙まで流されていた。
徳川軍は大軍勢を率いてこの大阪城を取り囲む。この劣勢打破するのは困難だろう。だが今の私に出来得るすべての能力を結集してこの戦に挑む。真田に脈々と受け継がれて行ったこの力、この魂、今此処に示そう。
日が過つにつれ、状況は悪化していく。今、状況は劣悪なのは判っている
判っている
「判ってないにょ」
「たま」
どうして来た?あの時今生の別れをしたはずだ。
「名づけ親を見殺しにする程、あちしデキがよくなくってね」
それにこっちにいた方がおもしろそうだし
そう言って背後に気配を落とした。
覚えている?幸村さま
一番初めに会った時
幸村さま、なんで名前ないんだ?って聞いたじゃん
馬鹿だね~、忍びには名前なんかいらないんだよ
しかし佐助達忍びには名前があるぞ
だから~、乙女には名前なんかいらないっっつうの、ど~せヤバくなったら自害して痕跡消さなきゃならないし
そしたら少し考えた顔をしたあんたは、あちしの目をみて言ったわけ
「そなたは私の忍びだ。私の忍びは気安く自害など考えるな」
生きろ
人は誰でも生きる権利がある
それから少しして、たま、と呼ばれるようになった。
飼っていた猫によく似てるんだと、酷ぇ
でも
「たまは私にとって、大切な家族のような存在だった」
そなたを見たいると、たまが帰って着てくれたように思えて
そう言って悲しそうに微笑んだ主に
やばいなぁ
これじゃぜってぇ裏切れないし、できないね
仕方ないから護ってやるよ
あちしの命に代えてもね
「たま、約束して欲しい」
「なに?」
私たちは背中合わせに会話をする。いつものことだ。
「…此度の戦、出口がない」
「そうっすね」
「私になにかあっても」
そなたは生きろ
「そいつぁ、無茶難題だな~」
「無理難題ですね」
真田陣営に今私一人で、夜明けを待っている。そこに私の忍びが現れる。これがそうやって出入りするのは何時もの事だが、その場にそぐわない声が聞こえた。
見れば、あの庵で世話になっていた老女で、見張りすら気づかれずにこの真田陣営奥迄来たというのか。
背中にイヤな汗が伝う。
あの老女の姿をしているが、何かが違う。そう人の姿をした…何か
「そう、怖い顔しはったら、ええお顔が台無しどすぇ」
老女はにっこり微笑み、少ししゃがむ。
「お忘れ物、届けに参りました」
「忘れ…物?」
はい、と言うと両手を包み再度広げる。すると先刻まで何も無かった手のひらから淡く光る物体が出てきた。その物体は形が整わない内に私の元へ駆けて来る。
「…ぁ…」
私は思わず跪き、両手でその物体を受け入れた。
「余計な事しなくてもいいのに~」
「ふふふ、でもお約束でしたからなぁ、この方の」
ほなまた、と言った老女はもうその老いた姿でなく傘を広げ天女如き姿に戻り、光を纏ってその姿を消した。
すまない
だが、一番誤らなくてはいけない人がいる。
両手を広げると、そのお顔はやはり怒っていて、私が彼を老女に預けて庵を降りたのが不満を露にされていた。
しかし、この一戦、私は生きているか保証はない。せめて私の意地に巻き込まれることなく、生きていて欲しい、そう思っていたのだが
「それこそ勝手すね」
そうだな
それこそ勝手だ。
貴方は其れを私に身をもって教えてくれていたはずなのに、今度は私が貴方にしてしまいました。
「三成殿」
【続く】